竜の刃

『背』

 やがて空が明るみ始めると、祇空、風虎、樗良、洒堂、許六の五人は、風竜へと姿を変えた雲漂の背に乗り、遥か西の黄金の地を目指した。

 全員を背に乗せると、竜はすーっと音も無く浮き上がった。目線は遠くに見える山々よりもずっと高い。雲漂は進路を見定めると徐々に速度を上げ、やがて馬の足よりもずっと速く曙の空の中を泳ぎ始めた。

「うわ〜〜〜! すげ〜ぞ! 飛んでる飛んでる!!」

 いくつもの雲を抜け、空を切り裂きながら進む。耳元で風が唸る。白を連れて行きたいと散々ごねた樗良だったが、空を飛ぶというこれまで経験したことの無い感覚に興奮していた。

「ぎ・・・祇空さんよ! な、な〜にが竜の背中で一休みだの〜! こ、こんなところで眠ったらたちまち振り落とされるの〜!」

 許六は目を開けることも出来ず、鱗に必死にしがみついている。

「そうか? なかなか快適だと思うが・・・」

 目の前に現れた雲が、瞬きする間に遥か後方へと流れ去ってゆく凄まじい速度の中で、祇空は髪をなびかせながら腕を組み平然と竜の背に立っている。

 風虎と洒堂はあぐらをかいてそれぞれ黄金の地と黄金の民、そして玉鋼に思いを馳せているようだった。

「こ、これ〜雲漂さんよ〜もっとゆっくり飛ばんかの〜〜〜」

「うるさいな許六のやつ・・・」

 祇空は飛び始めてからずっと叫んでいる許六に近付いた。隣に立つと彼の腰に腕を回し、ひょいと持ち上げ背の上を竜の頭の方に向かって歩き始めた。

「ここここら〜〜ななななんてことするかの〜〜〜!!」

「それでもう落ちる心配は無い。大人しく寝てろ」

 祇空は許六を雲漂のたてがみの生えている場所へ連れて行ったのだ。そして、突風にはためく茶色いたてがみを片手で一掴みすると、許六の右手を縛った。左手、右足、左足と順番に縛り、あっという間に許六の身体を雲漂に固定してしまった。

「これで少しは静かになるだろう。さて、俺様も少し眠るか」

 まだ後ろで喚いている許六を置き去りにし、祇空は皆の下へと戻ってくるなりごろりと横になった。

「おい樗良、落ちても知らんぞ! 拾わないからな!」

 落ち着きの無い樗良に、顔は上に向けたまま祇空は寝ながら声をかけた。

 樗良は竜の長い胴体から伸びている短い足へと移動していた、その足の先にある、六本の指の一つにつかまりぶら下がり、一人はしゃいでいる。
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